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23話-4 再会と昇格。

last update Last Updated: 2025-05-20 20:00:00

「全く、カイの奴め」

だが、カイの言う通り、忙しいせいで、フェリシアに対してもそっけない態度になってしまっている。そのせいか、まだフェリシアからあの時の返事は貰えていない。

それに、こうして離れている間にフェリシアの身に何かあったらと思うと気が気ではない。何か良い手立てはないものか。

そう悩んでいると、ルークス皇帝の側近が執務室に入って来て、皇帝の間に今すぐ来て欲しいと言われた。

ルークス皇帝が午後に呼び出すのは珍しい。何か緊急な用件なのだろうか?

* * *

「エルバートよ、急に呼び出してすまない。伝えたきことがある」

皇帝の間で玉座につくルークス皇帝は王座の階段の前で跪くエルバートを見据える。

「フェリシアに3週間程の宮殿勤めを命じる」

エルバートは両目を見開く。

フェリシアに宮殿勤め、だと?

「それは何ゆえでしょうか?」

エルバートは問う。

「先日、令嬢式の際に確かめたが、フェリシアの祓い姫の力は我をも超える。つまり、今、フェリシアは大変危険な状態にある」

「それゆえ、フェリシアに教官を付け、力の制御の仕方を宮殿にて伝受させたい。そしてそれに加え、我の料理も任せたい」

「フェリシア宛ての求婚の手紙が後を絶たないこと、そして魔がより襲って来ないかと、フェリシアをこのままブラン公爵邸にいさせて良いものかというお前の不安もこれで取り除けよう」

見抜かれている。だが、ルークス皇帝の料理をフェリシアに任せるのは如何なものか。

「しかし」

「エルバートよ、これはアルカディア皇国の行く末の為でもある。良いな?」

ルークス皇帝はエルバートの言葉を遮り、強く念を押す。

アルカディア皇国の行く末の為と言われてしまっては承諾する他ない。

「かしこまりました」

エルバートはそう答え、跪きながら深く頭を下げた。

* * *

「え、わたしが宮殿勤めですか?」

その晩。中庭でフェリシアは驚きながら問う。

「あぁ。宮殿に長きに泊

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